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非デザイナーこそ身につけたい「デザイン思考」。私が勘違いしていた3つの考え方。

COLUMN

2022/06/03

皆さん「デザイン思考」という言葉をご存じでしょうか?

最近では様々なメディアでもピックアップされているので「詳しくは知らへんけど聞いた事あるで?」という方、多いのではないでしょうか。
かく言う私は「何となく知っている」程度でした。

というのも、初めてデザイン思考に触れた時に感じた印象が「ふ~ん。それって当たり前の事やん?」という印象だったからです。それからは何となく知ったつもりで深く学ぼうとはしませんでした。

しかしながら先日デザイン思考について改めて学ぶ機会があり、自分の中で捉えていたデザイン思考が、実は色々と違っていた事に気がつきました。
この記事では、そもそもデザイン思考って何なん?という方は勿論、私と同じように何となく知っている(知らんけど)という方にも読んでいただき、デザイン思考の本質を理解してもらう事を目的としています。

デザイン思考(Design Thinking)とは何か

デザインというキーワードから、

「デザイナー以外は必要のないもの」「何かカッコいいビジュアルを作るための方法」
こんな風に考える人が多いのではないかと思います。

ですが本来、デザインとは
目的のために、カタチや仕組みを作ること」と定義します。
つまりデザインするという事は、成果物やプロセスを設計して、目的を達成させる=デザインすること。と言えます。

デザイン思考というキーワードを世界的に広げるきっかけを作ったデザインコンサル会社「IDEO」の創業者デビッド・ケリーは、デザイン思考を以下のように表現しています。

“イノベーションを生み出す人間中心のアプローチ”
By David Kelly,IDEO Founder

い、いまいち分からんw

ざっくり説明すると、
①ユーザー起点でモノゴトを考えたうえで課題を設定
②課題解決のためにアイデアを創造
③そのアイデアを基にアプローチを行い、課題解決を目指す
この一連の考え方。がデザイン思考です。

どうです?何となく、分かりました?

とりあえず課題を設定するにはまずはユーザー理解からだよね!解決策のアイデアもユーザー起点で考えるべきだよね!というポイントさえ抑えておけば今はOKです!


とはいえデザイン思考は、今や全てのビジネスパーソンが理解して、実践できる必要があります。
それは何故か?デザイン思考は現代のビジネス上の問題を解決するための基本となる考えであるからです。

デザイン思考の全体像

1.共感・理解『Empathize』

「ユーザーを深く理解し、共感する」

ここで大事なことは「ユーザー中心主義」。常にユーザー視点を持つこと。ターゲットの目線で考えることで、背景や課題が見えてきます。

2.定義・明確化『Define』

「アプローチするべき問題を明確にし、定義する」

「ターゲットが困っていること」「なぜ困っているか」を明確にし、コアとなる問題を見つけだしましょう。

3.アイデア発想『Ideate』

「問題を解決するアイデアをなるべく多く出す」

出来るだけ沢山のアイディアを出すことが重要になります。

4.プロトタイプ『Prototype』

「アイデアを実現する形づくりをする」

アイデアが出たら、検証するためにプロトタイプを作成しましょう。

5.テスト『Test』

「プロトタイプを利用して想定ユーザーにテストを行う」

プロトタイプが出来たらそれで終わりではありません。ここからターゲットに向けて検証・改善を繰り返し、試行錯誤しながら、最終的にクオリティの高いアウトプットを目指します。

私が勘違いしていた事

1.共感理解はクライアントの事ではなくあくまでもユーザー。さらにユーザーの言動の事でもない

「ユーザー中心主義」と聞くと、ユーザーの求めているものを聞き「その対象の要望」や「その対象が考えた課題を解決すること」と考えてしまいます。ユーザー中心主義というのは、ユーザーよりもユーザーのことを深く理解することで、ユーザー自身も気づいていない問題(インサイト)を解決することなのです。

例えばユーザーが「速い馬が欲しい」と要望していたとします。

そのまま速い馬を差し出すのは間違いではないが、問題の本質を解決したとは言えません。そこで「早く移動したい」事を問題の本質として考え、新しい移動手段(例えば自動車)の開発に成功すれば、それは立派なイノベーションになります。
共感からインサイトを得る事でイノベーションを生み出す事こそがユーザー中心主義でありデザイン思考の考えであるのです。

2.デザイン思考は方法ではなくマインドセット(考え方)に近い

デザイン思考は5つのプロセスが定義されている(Define~Test)が、必ずしも順番通りに行う必要はありません。重要なのはプロセスを意識するという事。このことから、デザイン思考は方法というより考え方に近い事が理解できます。

3.画期的なアイデアを提案する事ではなく問題定義をする事。ユーザー自身も気づいていない問題を探し当てることの方が重要

デザイン思考を活用したプロダクト開発で重要視すべきは、導き出したソリューションでなく、定義した問題の方です。ユーザー自身も気づいていない問題を探し当てる事に、デザイン思考としての価値が存在します。

まとめ:デザイン思考の正体とは

デザイン思考とは、「共感をもとに解決すべき問題を見つけ出し、それに対して最善の解をもたらそうという仮説推論の考え方」。

デザイン思考はデザイナーだけの考え方ではなく、ビジネスに携わる全ての人に関係する考え方です。
プロダクトを作る以外にも、プロジェクト進行や、組織課題を考える時など、あらゆる場面でデザイン思考が活用できます。

重要なのは関わる人間全員が本質を理解しておくこと。そして同じ目的を目指して進むこと。

まとめ:デザイナーとして

デザイン思考というのは、それを使えば何でも解決できる魔法の言葉でもないし、我々デザイナーは日頃から当然のように意識している考え方でもあります。それを世紀の大発見!みたいに持て囃されている事に正直違和感もあります。

しかし、大事なのは何故今デザイン思考が重要視されているのか?という事。

コロナショックにより我々の消費は大きく変わりました。他人を意識する事が無くなり、純粋に自分の心を潤し、生きる意味を教えてくれるものを求めるようになりました。つまり「自分が本当に共感できる本質的なもの」だけが選ばれる時代。

『規模』の時代『機能』の時代から『共感』の時代になった今、今まで以上に「共感」を考える事の重要性が高まりました。

その中で、ユーザーの共感から解決すべき問題を見つけ出す「デザイン思考」は今の時代にこそ必要な考え方なのではないでしょうか。
今まで以上に世の中に存在する様々なものをよく見る・経験する・研究する。そして共有することが、我々デザイナーにとって必要なことだと感じます。

弊社制作チームでは、月に数回ワークショップとして、フレーミング&リフレーミング(ある問題状況を枠組みに当てて考え、且つ問題の枠組み自体を問い直すこと)と呼ばれる活動を始めました。目的としてはデザイン思考に役立つ「仮説推論力」を高めるためです。デザイン思考をチーム内でしっかり学び、今の時代で活躍できるよう日々レベルアップを図っております。

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